信頼の通貨を、いちばん減らすのは「断らない」ことだった
お金は信頼の通貨です。その通貨をいちばん早く減らすのは、何でも引き受けて、断らないことなんです。
ととのえる屋では、お金のことを「信頼の通貨」と呼んでいます。
お金って、ただの数字じゃなくて、信頼を貯めたり減らしたりする道具なんですよね。「この人にお金を払う」というのは、その人を信頼している、という気持ちの現れ。
逆に言うと、信頼が減ると、お金の流れも止まる。
じゃあ、信頼の通貨をいちばん早く減らすのって、何だと思いますか?
ふつうに考えると「ミスすること」「連絡が遅いこと」「約束を破ること」あたりが浮かぶと思います。
でも、わたしがいろんな現場を見てきて、いちばん早く信頼を減らすのは、たぶん別のことなんです。断らないこと、なんですよ。
「なんでもやります」が、いちばん危ない
「うちはなんでもやります!」「お気軽にご相談ください!」「どんなお仕事も承ります!」。
これって一見、すごくありがたいキャッチコピーに見えるんですけど、お客さまの立場からすると、実はけっこう不安なんです。
なんでもやる、ということは、何が得意かわからない。何が得意かわからない人に、自分のいちばん大事な仕事をお願いするのは、ちょっと怖い。
「これはできるけど、これはやれません」と最初に断ってくれる人の方が、ずっと信頼できる。
引き受けたあとに減るパターン
もうひとつ、もっと深刻なパターンがあります。
最初に「やります!」と引き受けて、あとからじわじわ信頼を減らしていくパターン。
「あ、この内容だとちょっと予想より難しくて…」「すみません、思ったより時間がかかって…」「ごめんなさい、別の仕事が入ってしまって…」。
これを3回繰り返すと、お客さまの信頼の通貨は、ほぼゼロになります。
最初に「これは難しいので、お引き受けできません」と断っておけば失われなかった信頼が、引き受けてから後出しで減っていく方が、ぜんぜん致命的なんです。
わたしも引き受けすぎて失敗した
これは自分の経験で書いています。
清掃業をやっていた時期に、ありがたいことに紹介がどんどん増えていって、月に20件くらいの新規案件を受けていた時期があります。
そのうち、人手が足りなくなって、対応が雑になって、現場でクレームが起きはじめて、結果として4社くらいから「もう来なくていい」と言われました。
これって、もし最初の段階で「うちは月に5件までしか受けられません」と断っていたら、絶対に起きなかったことなんです。
引き受けすぎたわたしの判断が、信頼の通貨を一気に削った。これは、お金を返したくらいでは取り戻せない損失でした。
「断れる人」になるための準備
じゃあ、断れる人になるためには、何が必要か。
ひとつは、自分の上限を、数字で決めておくこと。
ととのえる屋では、年契約3社・月顧問5社・HP制作月2本、と決めています。これを超える依頼が来ても、機械的に「再来月以降になります」と返せる。
判断の余地を残しておくと、目の前の人の顔を見て「うーん、断りにくいな…」と引き受けてしまうんです。
数字で先に決めておくと、感情を挟まずに断れる。これが大事。
断り方にも、お作法がある
ただ、断ればいい、というわけでもなくて、断り方にもお作法があります。
わたしが意識しているのは、3つだけ。
ひとつめが、断る理由を正直に書く。「忙しくて」じゃなくて、「いま3社さんと契約しているので、これ以上は対応の質が落ちてしまうため」と書く。理由を正直にすると、お客さまも納得してくださる。
ふたつめが、いつなら受けられるか、目安を書く。「半年後ならお引き受けできます」「年明けに状況が変わるので、そのときご相談ください」と書く。断り=終わりにしない。
みっつめが、代わりの選択肢を1つだけ添える。自分でできない部分は、信頼できる別の方を1人だけご紹介する。3人紹介すると逆に信頼が下がるので、1人だけ。
この3つを守ると、断っても信頼が増えることがあります。
「断れない人」が陥る、最後の罠
「断れない」を続けていると、最後にひとつ、決定的な罠があります。
自分のことが嫌いになる、というやつです。
引き受けすぎて、対応が遅れて、お客さまに迷惑をかけて、自分でも「今日もできなかった」が積み重なる。
これが続くと、自分の仕事を自分が信用できなくなって、結果として、お客さまへの対応もどんどん雑になる。負のループです。
ここから抜けるには、断る、しかない。「断ること」って、お客さまへの誠実さでもあるけど、いちばんは自分への誠実さでもあるんですよね。
断ると、お客さまが残る
最後に、ひとつだけ書いておきたいことがあって。
「断る」を覚えてからの方が、なぜかお客さまが増えました。
3社しか受けない、月顧問は5社まで、と決めてから、紹介がむしろ増えたんです。
「あの人、ちゃんと断る人らしいよ」「だから、引き受けてもらえたら本当にちゃんとやってもらえる」。
そういう評判が、勝手に転がっていく。
信頼の通貨って、貯めようと思って貯めるものじゃなくて、断ることで貯まるものなんだなあと、いまは実感しています。
うん、そんな感じで、お金と信頼の流れをととのえています。
この種の整え方を、自分のお店や会社でも試してみたい方へ。
「うちの場合はどうかな」と一言、送ってください。
仕組みからお話しします。